除菌・消毒
2018.03.26

空間除菌の効果・仕組み

空間除菌とは、空気中に潜むウイルス、細菌、カビやニオイを除去することを指した言葉ですが、どのような仕組みで除菌するのか、また、空間除菌の効果はどのようなものなのかドクター監修の記事で紹介いたします。

TVコマーシャルなどで「空間除菌」という言葉を耳にしたことがある人は多いでしょう。なんとなく空気を除菌するといったイメージはつくものの、どういう仕組みで空間を除菌するのか不思議ですよね。ここでは、空間除菌の効果と仕組みについて解説します。

空間除菌ってどういうもの?

まずは、空間除菌とはどのような仕組みになっているのかみていきましょう。

空気中のウイルス・細菌・カビなどを除去する

空気中に潜むウイルス、細菌、カビやニオイを除去すること・方法が空間除菌です。空間除菌を目的とした製品は、空気中のウイルス、細菌、カビ、ニオイを除去する成分(主に二酸化塩素や次亜塩素酸など)を放散することで除去します。二酸化塩素や次亜塩素酸といった成分は強い酸化力を持ち、空気中のウイルス、細菌、カビなどに付着して酸化し構造を変化させ、そのはたらきを失わせます[1]。

空間除菌は効果ある?

空間除菌と聞くと特別な器具や装置を必要とするイメージがあるかもしれませんが、空気の入れ替えを行うこと、つまり換気は立派な空間除菌のひとつです。インフルエンザ感染拡大の防止法としても推奨されており、空気中のウイルス、細菌、カビなどの除去に最も有効な方法とされています[2]。

換気がウイルスなどの除去に有効な理由

インフルエンザウイルスやノロウイルスなどの感染が発生する時、ウイルスは外の空気から家の中に入ってくるのではなく、人によって持ち込まれることがほとんどです。ウイルスが持ち込まれた家の中が密閉状態では、その中でウイルスは増えていきます。窓を開けて空気の入れ替えをすると家の中のウイルス量は減少します。

極端な話をすると、ずっと窓を開けておけばウイルスが増えることはありません。しかし冬場などは冷たい外気で体を冷やしてしまうので、ずっと開けっぱなしにすることもよくありません。空気の入れ替えを行う目安としては東京都健康安全研究センターの「インフルエンザ予防のための加湿・換気対策」で2~3時間に1回実施することが推奨されています[3]。

窓を閉めているときの除菌対策

窓を閉めている間もウイルスが増えないようにしたいと考える方もいると思いますので、そういうときに一般向けに販売されている空間除菌製品は有効なのか解説します。

以下は、二酸化塩素ガスを放散する空間除菌剤がインフルエンザの感染に抑制効果があるか検証した研究結果です[4]。

研究内容
東京近郊の陸上自衛隊駐屯地内の2施設を使用し、それぞれの施設に勤務する自衛官と事務官(全787名)を対象に、参加同意を得られた日~インフルエンザの流行終息までの54日間の病状を調査する。

【調査方法】

  1. 対象施設のうち片方の施設に二酸化塩素ガスを放散させる置き型の空間除菌剤を設置、もう片方は設置しない。(設置施設の勤務者:345名、設置なし施設の勤務者:442名)
  2. 置き型除菌剤は開始から1ヶ月で新品に交換。
  3. 調査期間終了後、対象者全員に病気についてアンケートを実施。
  4. インフルエンザワクチン接種の有無、インフルエンザとみられる症状の有無(ありの場合は発症日)、インフルエンザ検査キットによる結果を調査し、除菌剤を設置した施設と設置なし施設とで比較した。

※インフルエンザとみられる症状の定義は以下の通り

  • 38.0℃以上の熱が出た
  • せきやのどの痛みがあった
  • 医師の診察や検査でインフルエンザ以外の原因はなかった

【結果】

  • インフルエンザの症状あり→設置施設:2.3%(345名中8名) 設置なし施設:7.2%(442名中32名)
  • ワクチン接種率→設置施設:17.7%(345名中61名) 設置なし施設:23.1%(442名中102名)
  • 検査キットでの陽性反応→設置施設:2名 設置なし施設:12名

インフルエンザとみられる発症が少なかったのは除菌剤を設置した施設の方でした。この調査では、空気中のウイルスが含まれる飛沫や鼻・口の粘膜内の水分に二酸化塩素が溶け込むことで吸入するウイルスのはたらきを失わせるのではないかという推測をしています。

しかし、対象者の病状の収集方法はアンケートであり、回答した人の記憶や個人の判断が入っている部分が否めません。また、勤務時間のみ除菌剤の影響を受けており生活時間の多くは影響を受けていなかったこと、室内の二酸化塩素の濃度は明確にされていないが低い値であったされています。これらのポイントを考慮する必要があるとした意見もあります。

別の調査では、二酸化塩素ガスを放出する置き型除菌剤が、空気中の浮遊インフルエンザウイルスの失活量に変化を与えるか調査しています[5]。

研究内容
冬場の家庭の小さめのトイレ空間を想定し、室温23℃・湿度30%にした2m×1.5m×1.8mの空間内で二酸化塩素ガスを放散させる置き型の除菌剤のある場合とない場合の活性ウイルス量の推移を調査する。

【調査方法】

  1. 上記空間内で除菌剤を開封し、二酸化塩素ガスを一定の濃度に保つ。(0.03-0.04ppmを維持)
  2. インフルエンザウイルスの入った液を2分間噴霧してミスト状で浮遊させる。
  3. 除菌剤のある空間とない空間で空中浮遊ウイルスの活性量の時間経過による推移を比較する。

【結果】

除菌剤のある空間とない空間の活性ウイルス量に差はなく、除菌剤によるウイルスの失活効果は認められなかった。

空間除菌剤を、インフルエンザの感染抑制を目的として使うには、今後もさまざまな条件のもとで効果を検証する必要があるでしょう。

空間除菌剤と併せて行いたいこと

インフルエンザの予防対策として空間除菌剤を使うことはできますが、ウイルス対策の基本も忘れないようにしておきましょう。予防接種や手洗い・手指の消毒、マスクの着用、換気などがありますが、このうち自分で励行できる手洗い・手指の消毒とマスクの着用について、正しい手順や使い方をおさらいしておきましょう。

手洗い・手指の消毒が必要なタイミング

ウイルスや細菌は身近なところに多く存在しています。用を足した後や食前はもちろんですが、下記のシーンでも手洗い・手指の消毒を行いましょう。

  • 電車やバスを利用した後
  • お店や施設の手洗いを使用した後(備え付けのアルコールがあれば消毒する)
  • 感染者の看病や世話をした後
  • 掃除やゴミの片付けを行った後
  • 調理の前後
  • メイクやスキンケアの前後

手洗いの手順

  1. 手をお湯でよく濡らし、よく泡立てた石けんの泡を全体に広げます。
  2. 右の手のひらを左の手の甲に乗せ、指を組んで泡をすりこみます。これを左右交互におこないます。
  3. 手のひら同士をこすりあわせます。
  4. 指を組んで、指の間にも泡を行きわたらせます。
  5. 右の手のひらで左の親指を握って回すようにこすります。左手も同様です。
  6. 握った右手で左手のひらを時計回り、反時計回りにこすります。左手も同様です。
  7. お湯で泡をよく洗い流し、使い捨てタオルなどでよくふきます。
  8. この手順をもう一度繰り返し、最後にアルコールで手指消毒をして完了です。

詳しくは『感染症予防のための正しい手洗い方法、時間、タイミングとその効果』もご覧ください。

マスクの使い方

感染予防を目的とする場合、マスクはフィルタの性能が高い不織布製がおすすめです。また、自分の顔にフィットしたものを使い、顔とマスクの間に隙間ができないようにしましょう。

同じマスクを使い続ける方もいますが、不織布製マスクは原則使い捨てです。取り替えの目安は1日1枚程度とされています。マスクのフィルタ部分には多くの菌やウイルスが付着しているので、取り替え時はゴムの部分を持って、フィルタ部分には触らないようにしてください。

まとめ

空間除菌剤は空気中のウイルスや細菌などの特性を変化させるはたらきがありますが、消失させるわけではないため、換気をして空気を入れ替えることで家の中の空気を常に新鮮に保つことができます。窓を開けられないときは、空間除菌剤を活用することで清涼感が得られることもあるでしょう。しかし、人によっては空間除菌剤に使われる成分特有の刺激臭が苦手と感じることがあるようです。その場合は無理をせずに使用方法や使用上の注意に沿って使い方を調整するようにしましょう。小さな子どものいるお宅ではこどもの手が届かないところに置かないようにし、ペットを飼っている家ではペットのいるところでの使用に注意しましょう。

参考文献

  1. [1]社団法人 日本二酸化塩素工業会. "二酸化塩素とは?" 社団法人 日本二酸化塩素工業会. http://chlorinedioxide.or.jp/clo2(参照2018-03-09)
  2. [2]厚生労働省 健康局 結核感染症課. "インフルエンザの感染拡大を防ぐために 新型インフルエンザ等から高齢者を守る方法を学ぶ" 厚生労働省. http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou01/dl/0311_korosho.pdf(参照2018-03-07)
  3. [3]東京都健康安全研究センター. "インフルエンザ予防のための加湿・換気対策" 東京都健康安全研究センター. http://www.tokyo-eiken.go.jp/files/archive/issue/kouhoushi/health/24.pdf(参照2018-03-09)
  4. [4]三村 敬司ほか. 二酸化塩素放出薬のインフルエンザ様疾患に対する予防効果, 環境感染誌 2010; 25(5): 277-280
  5. [5]西村 秀一.ウイルス不活化効果を標榜する二酸化塩素ガス放散製剤の実用性の有無の検証―冬季室内相当の温湿度での空中浮遊インフルエンザウイルスの不活化について―, 環境感染誌 2016; 31(5): 310-313
  6. *)_https://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/09/dl/s0922-7b.pdf_
  7. マスク使用の考え方 厚生労働省

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