ケース別の感染予防
2018.04.17

妊婦がノロウイルスに感染したら赤ちゃんは大丈夫?予防するには?

ノロウイルスに感染すると激しい嘔吐や下痢に襲われるイメージがありますが、妊娠中にノロウイルスに感染してしまうと赤ちゃんに何か影響があるのかを解説します。また、感染しないための予防方法も紹介します。

ノロウイルス感染症と聞くと、激しい嘔吐や下痢が同時に起こって1日中トイレから離れることができないといったイメージを持たれる方は多いのではないでしょうか。妊娠中の女性の場合、もしノロウイルスに感染してしまったらおなかの赤ちゃんに影響するのではないかと心配になりますよね。ここでは、妊娠中にノロウイルスに感染するとどうなるのか、感染しないための予防法を解説していきます。

妊娠中のノロウイルス感染は怖い?

おなかの中の赤ちゃんは、お母さんとは異なる血液型や遺伝子を持っています。人のからだには自分とは違う特徴を持つものを異物と判断し、攻撃・排除しようとする仕組みがあり、これを免疫と呼びます。お母さんのからだは、おなかの赤ちゃんを攻撃しないようにこの免疫機能を低下させると考えられており、免疫機能が低下しているということは感染症にかかりやすい状態となります[1][2]。それでは、妊娠中にノロウイルスに感染してしまうとどうなるのでしょう。

母体への影響

ノロウイルスは感染してから症状が出るまでに24時間~48時間の潜伏期間があります。主な症状としては嘔吐や下痢、腹痛、発熱などです。軽いかぜのような症状や、感染しても発症しないといったこともあります。通常は1日~2日で症状がおさまることがほとんどですが、妊娠中はさまざまなからだの変化が起こることから体力が低下しやすいため、症状が長引いたり、嘔吐、下痢による脱水を起こしたりする可能性があります。

おなかの赤ちゃんへの影響

ノロウイルスに感染したお母さんから、おなかの赤ちゃんに感染したり、早産や流産のリスクが高まったりすることは基本的にはありません。

赤ちゃんに直接影響を及ぼすことはなくても、体調が不安定になりやすい妊娠中は気をつける必要があります。また、ノロウイルスは感染力が非常に強く、症状がなくても最大3週間も感染力を維持しますので[3]、家族など周りの人に感染させてしまう可能性の高い感染症です。

ノロウイルスに予防接種や治療薬はある?

インフルエンザには予防接種がありますが、ノロウイルスには予防接種はありません。また、感染した場合もノロウイルスに直接効果を発揮する治療薬(抗ウイルス薬)はないため、症状に合わせた対症療法を行うことになります。下痢症状を抑えようとして、止しゃ薬(下痢止め薬)の使用を考える方もいると思いますが、病気の回復を遅らせることがあるので使用しないようにしましょう[4]。

日々の予防意識でノロウイルス感染を防ぐ

ノロウイルスに予防接種はありませんが、基本的な予防策を心がけることで感染を防ぐことは可能です。日常生活で意識するとよい予防法を紹介します。

まめな手洗い・手指の洗浄

手を洗うことは知らない間に付着したウイルスを除去することができます。外出から戻ったとき、食事の前、お店や公共施設など多くの人が使う場所のトイレを利用した後は必ず手洗いを行いましょう。

【正しい手洗い方法】[5]

  1. 手を水で濡らし、十分な量の石鹸を手にとって広げます。(固形石鹸ではなく、液体石鹸を使いましょう。)
  2. 右の手のひらを左の手の甲に乗せて指を組んでこすります。左手も同様です。
  3. 手のひら同士の指を組んでこすります。
  4. 右の手のひらで左の親指を握って回すようにこすります。左手も同様です。
  5. 握った右手で左手のひらを時計回り、反時計回りにこすります。左手も同様です。
  6. 水で洗い流し、ペーパータオル等の使い捨てタオルでよく水分を拭きとりましょう。使い捨てタオルがなければ普通のタオルを使いますが、共用しないようにしましょう。
  7. タオルを使って蛇口を閉めて完了です。

食べ物は十分に加熱する

ノロウイルスは汚染された2枚貝を生食や不十分な加熱処理で食べることで感染の可能性が高くなります。生牡蠣が大好きという人もいるとは思いますが、妊娠中は生食を避けるようにしましょう。調理方法に十分気を使い、感染リスクを下げるようにしましょう。

家族がノロウイルスに感染したときの感染予防

ここでは、身近にノロウイルスに感染した人が出た場合の感染予防法を紹介します。

吐しゃ物や便を処理する時の注意点

床に飛び散った感染者の吐しゃ物や便を処理するときには、使い捨てのエプロンやマスク、手袋を必ず着用してください。汚物中のウイルスが飛び散らないように、ペーパータオルやペットシーツで慎重に拭き取ります。拭き取った後は、次亜塩素酸ナトリウム(塩素濃度約200ppm)や次亜塩素酸ナトリウムを含む塩素系漂白剤で浸すように床を拭き取り、その後水拭きをします。

おむつや便の付着したものは速やかに閉じ、ビニール袋に入れてください。拭き取りに使用したペーパータオルなども、ビニール袋に入れ、密閉して廃棄してください。ビニール袋内に廃棄物が充分に浸る量の次亜塩素酸ナトリウム(塩素濃度約1,000ppm)を入れておくことが望ましいとされています。

次亜塩素酸ナトリウムは細菌・ウイルスの除去に幅広く使える消毒薬であり、薬局やドラッグストア、通販サイトなどで入手することができます。次亜塩素酸ナトリウムを配合した除菌スプレーなども商品化されていますので、手ごろなものを買い置きしておくのもおすすめです。また、濃度や使用方法を十分確認してから使いましょう。

空気中に舞っているウイルスの除去

適切な処置ができていないと、ノロウイルスは感染力をもったまま空気中に拡散し、それを吸い込んだ人が感染する可能性があります。吐しゃ物や便は乾燥しないうちにすぐに処理し、処理した後は十分に喚気を行うことが重要です[4]。

トイレやドアノブなど手が触れやすい場所の掃除

家の中でウイルスが付着しやすい場所は以下があげられます。

  • トイレ:ふた、便座、水洗レバー、トイレットペーパーホルダー
  • 部屋:ドアノブ
  • お風呂・洗面所:蛇口、タオル
  • キッチン:食器

タオルは共用しないようにし、トイレ内やドアノブなどの消毒も次亜塩素酸ナトリウムなどを使用しましょう。食器はできれば食事をした後すぐに次亜塩素酸ナトリウム液に十分浸して消毒をしてから、下洗いをしましょう。次亜塩素酸ナトリウムは金属を腐食させてしまう作用があるので、消毒後はしっかりと拭き取ることが大切です[4]。

ただし、妊娠中は感染源となるものには近づかない方がよいので、夫などほかの人に汚物の処理や掃除を代わってもらえるとよいでしょう。

参考文献

  1. [1]三宅研究室(自己免疫・神経免疫研究室). "性ホルモンと免疫" 国立精神・神経医療研究センター 神経研究所 免疫研究部. https://www.ncnp.go.jp/nin/guide/r_men/column2.html(参照2018-03-27)
  2. [2]国立成育医療研究センター. "妊娠と薬情報センター:インフルエンザ情報(医療関係者向け)" 国立成育医療研究センター. https://www.ncchd.go.jp/kusuri/news_med/h1n1.html(参照2018-03-27)
  3. [3]厚生労働省検疫所. "ノロウイルスQ&A-WPRO" FORTH. http://www.forth.go.jp/topics/2018/02191103.html(参照2018-03-27)
  4. [4]厚生労働省. "ノロウイルスに関するQ&A" 厚生労働省. http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/kanren/yobou/040204-1.html(参照2018-03-27)
  5. [5]WHO. "Hand Hygiene Technical Reference Manual" WHO. http://apps.who.int/iris/bitstream/10665/44196/1/9789241598606_eng.pdf(参照2018-03-27)

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