ケース別の感染予防
2018.04.17

妊婦がインフルエンザにかかると赤ちゃんに影響する?予防法は?

妊婦さんがインフルエンザに感染したらどんなリスクがあるのか、大切な赤ちゃんに何か影響するのかを解説します。また、予防接種(ワクチン)や治療薬(抗インフルエンザ薬)の使用についてもドクター監修のもと説明します。

寒い季節が近づいてくると毎年大流行するインフルエンザの感染を懸念する妊婦さんは多いと思います。妊娠中にインフルエンザにかかってしまうとどんな危険が考えられるのでしょうか。大切なおなかの赤ちゃんに影響しないのか、予防接種や抗インフルエンザ薬の使用は大丈夫なのかについて解説します。また、インフルエンザにかからないために日常生活に取り入れられる予防方法も紹介します。

妊娠中のインフルエンザ感染は怖い?

妊娠中にインフルエンザに感染してしまうと、お母さんのからだやおなかの赤ちゃんにどのような影響が出るのでしょうか。

妊娠中は重症化しやすいため注意が必要

妊娠中はさまざまなからだの変化が起こるため、インフルエンザをはじめとした感染症にかかると症状が重くなったり、重度の合併症や入院のリスクが高まったりすることが考えられます。感染症にかかりやすくなる理由としては以下のものがあげられます。

免疫機能の低下
おなかの中に赤ちゃんがいるということは、自分と異なる血液型や遺伝子を持つ生命体が体内にいるということです。本来、人間のからだには自分と異なるものを異物として攻撃・排除する「免疫」という機能がありますが、お母さんのからだは赤ちゃんを攻撃しないように免疫機能を低下させると考えられています[1][2]。
免疫機能が低下すると病気に対抗する力が弱まります。
妊娠初期の悪阻(おそ:つわりが重症化した状態)
妊娠5~6週頃から妊婦さんの多くはつわりと呼ばれる吐き気や嘔吐、食欲不振、嗜好の変化、においに敏感になるなどの症状が起こりますが、ひどいつわりで食事や水分を取れず、治療が必要な状態となることを妊娠悪阻といいます。
体力が著しく低下するので感染症にもかかりやすくなります[2]。
妊娠中期以降の心肺機能の低下
おなかの赤ちゃんの成長にともなって子宮が大きくなることで他の臓器を圧迫し、その1つとして横隔膜が持ち上げられて肺活量が低下することや、血液量が増加して心臓に負担がかかることなどが影響していると考えられています[2]。

おなかの赤ちゃんへの影響

妊娠中にお母さんがインフルエンザにかかったとしても、インフルエンザウイルスがおなかの赤ちゃんに感染することは基本的にはありません。しかし、インフルエンザにかかったことで肺炎など別の病気を併発することで早産の原因となる可能性はあります[3]。

インフルエンザの予防接種や治療薬は母体や赤ちゃんに影響しない?

予防接種は、毒性を弱めたウイルスや細菌から作ったワクチンを注射し、体内でその病気に対する抗体を作ります。毒性を弱めているとはいえ、ウイルスを体内に入れて大丈夫なのか気になりますよね。また、治療薬(抗インフルエンザ薬)も副作用を心配する方はいらっしゃると思います。

予防接種は妊娠中も接種が推奨されている

妊婦さんはインフルエンザに感染すると重症化しやすいため、妊娠週数にかかわらず予防接種を受けることが推奨されています。インフルエンザの予防接種は、ウイルスの病原性を無くして、免疫をつくるのに必要な成分を取り出してつくった不活化ワクチンです。発熱などの副反応が出ることはありますが、あくまでも免疫を獲得する過程で生じている反応です。予防接種による重症化や流産、先天異常が起こったという報告はありません[3]。

インフルエンザは例年12月~4月頃に流行し、1月末~3月上旬に流行のピークを迎えます。予防接種を受けてから免疫ができるまで2~3週間程度かかるため、一般的には12月中旬までにワクチン接種を受けるのがよいのですが、妊娠中は体調が不安定なこともあります。特に、妊娠初期はいろいろな理由で流産のリスクが高いことから避けることもあります。接種タイミングは産婦人科医と相談しましょう。

治療薬(抗インフルエンザ薬)も早期の服用が推奨されている

もし妊婦さんがインフルエンザにかかった場合、また、インフルエンザと思われる症状があらわれたときは、なるべく早く(症状が出てから48時間以内)抗インフルエンザ薬を服用することが重症化を防ぐのに有効とされており、抗インフルエンザ薬がおなかの赤ちゃんに影響した事例は報告されていません[4]。

妊娠中にインフルエンザにかかったかもしれないときは、かかりつけの産婦人科医に事前に連絡して受診するとよいでしょう。処方された治療薬はきちんと飲みきることが大切です。

妊婦さんはインフルエンザ予防が大切

妊婦さんのインフルエンザ感染は、重症化や合併症を起こすことで早産のリスクが高まるため気をつける必要があります。まずは予防接種を受けることで感染するリスクや重症化のリスクを下げましょう。妊婦さん本人だけでなく、身近に接する家族もみんなで予防接種を受けておくと感染する可能性をさらに下げることができます。

ただし、予防接種だけでインフルエンザを完全に予防できるわけではありません。日ごろから以下の予防方法を意識して行いましょう。

  • マスクの着用
  • 手洗い・うがいの習慣化
  • 人ごみや体調の良くない人にはなるべく近づかない
  • 人の手がよく触れる場所(ドアノブ、テーブル、スイッチなど)の除菌
  • 空気の入れ替え

除菌方法について詳しくは 『感染症を予防する除菌方法|殺菌・滅菌・抗菌との違い』で詳しく解説しています。

空気の入れ替えについては『空間除菌の効果・仕組み』 をご覧ください。

参考文献

  1. [1]三宅研究室(自己免疫・神経免疫研究室). "性ホルモンと免疫" 国立精神・神経医療研究センター 神経研究所 免疫研究部. https://www.ncnp.go.jp/nin/guide/r_men/column2.html(参照2018-03-26)
  2. [2]国立成育医療研究センター. "妊娠と薬情報センター:インフルエンザ情報(医療関係者向け)" 国立成育医療研究センター. https://www.ncchd.go.jp/kusuri/news_med/h1n1.html(参照2018-03-26)
  3. [3]厚生労働省. "新型インフルエンザ対策(A/H1N1)妊娠中の人や 授乳中の人へ" 厚生労働省. http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou04/pdf/ninpu_1217_2.pdf(参照2018-03-26)
  4. [4]日本産婦人科学会. "妊娠している婦人もしくは授乳中の婦人に対してのインフルエンザに対する対応Q&A" 日本産科婦人科学会. http://www.jsog.or.jp/news/html/announce_20101222.html(参照2018-03-26)

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