ケース別の感染予防
2018.04.17

妊婦は予防接種を受けられる?気になる赤ちゃんへの影響は?

妊娠中は感染症への抵抗力が下がるため、予防接種を検討する妊婦さんは多いでしょう。妊娠中に予防接種を受けられるのか、母体やおなかの赤ちゃんに影響はないのかなどについてドクター監修のもと解説します。

妊娠中は免疫が低下するため感染症にかかりやすくなると聞いたことがある方もいるのではないでしょうか。感染症にかかってしまったら、おなかの赤ちゃんに何か問題が出るのではと心配になりますよね。感染症の予防方法として予防接種を思い浮かべる人は多いと思います。ここでは、妊娠中に予防接種を受けても大丈夫なのか、おなかの赤ちゃんに影響がないか、いつ受けるべきかを解説していきます。

妊娠中に予防接種を受けても大丈夫?

予防接種は、毒性を弱めたウイルスや細菌を注射して入れることで、体内でその病気に対する抗体を作り病気にかかりにくくしています。しかし、血液型や遺伝子の違う赤ちゃんを自分の体内に保持する妊娠中は、免疫機能が赤ちゃんを攻撃しない状態に低下させていると考えられています[1][2]。そのため、予防接種にも受けられるタイプのものと受けられないタイプのものがあります。

妊娠中に受けられる予防接種

ウイルスの病原性を無くして、免疫をつくるのに必要な成分を取り出してつくったワクチンを不活化ワクチンといいますが、このタイプは妊娠中でも接種可能です。発熱などの副反応が出ることはありますが、あくまでも免疫を獲得する過程で生じている反応です。妊婦さんが接種した方がよい不活化ワクチンは以下のものがあります。

  • インフルエンザ

インフルエンザは日本では毎年冬頃に大流行し、感染する可能性の高い病気ですので、予防接種を受けるようにしましょう。予防接種を受けることでおなかの赤ちゃんに影響が出たという事例は報告されていません[3]。

インフルエンザウイルスは感染性(ヒトに感染するための特徴・性質)を毎年変異させて流行しています。インフルエンザワクチンは、その年に流行するウイルスの型を予想して作られているので毎年接種しましょう。基本的には妊娠週数にかかわらず、いつ接種しても問題はないとされています[3]。

インフルエンザは例年12月~4月頃に流行し、1月末~3月上旬に流行のピークを迎えます。予防接種を受けてから免疫ができるまで2~3週間程度かかるため、一般的には12月中旬までにワクチン接種を受けるのがよいのですが、妊娠中は体調が不安定なこともありますので接種タイミングは産婦人科医と相談しましょう。

妊娠中に受けられない予防接種

ウイルスの病原性を弱めてつくったワクチンを生ワクチンといいます。ウイルスに感染したときとほぼ同じ仕組みで免疫を獲得するため免疫をつける力が優れています。しかし、まれにそのウイルスにかかったときと同じ症状が出ることがあり、妊婦さんの場合はおなかの赤ちゃんにもウイルスが感染する可能性があることから妊娠中は接種できません。

以下にあげる感染症は予防接種に生ワクチンを使用するため妊婦さんは受けることができません。

  • 風疹
  • 麻疹(はしか)
  • 流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)
  • 水痘(水ぼうそう)

これらの感染症の予防接種を過去に一度も受けておらず、さらにかかったことがなくて抗体を持たない妊婦さんは、感染するリスクが高まるため注意が必要です。本来は妊娠前に予防接種を受けておくことが大切であることを心に留めておいてください。

妊娠中の感染症予防

ワクチンを打っても感染症を100%防げるわけではありません。また、ワクチンを打つことができないときにも有効な感染予防法を紹介します。

家族など周囲の人が予防接種を受けておく

身近に接する人達に感染者がいなければ、それだけ感染する可能性は低くなります。家族が予防接種を受けて妊婦さんを守ってあげましょう。

マスクの着用

せきやくしゃみなどの飛沫をある程度防ぐことができる不織布(ふしょくふ)製マスクを着用しましょう。不織布製マスクはドラッグストアやコンビニエンスストアで購入できます。

手洗い・うがいの習慣化

知らない間に手や口の中、のどの粘膜に菌やウイルスが付着していることがあります。菌やウイルスを洗い流すために外出から戻ったときや食事の前は手洗いをしましょう。また、うがいにはのどの粘膜を加湿して菌やウイルスを付着しにくくする効果があります。

人ごみや体調の良くない人にはなるべく近づかない

電車やバス、駅や商業施設など人が多く集まる場所は感染症にかかるリスクが高まります。なるべく人の多い場所に近づかないことが有効ですが、出かける必要があるときはマスクを着用しましょう。

人の手がよく触れる場所(ドアノブ、テーブル、スイッチなど)の除菌

家族がかぜやインフルエンザなどの感染症にかかった場合は、家の中のドアノブ、テーブルや椅子、電気のスイッチといった人がよく触る場所を除菌・消毒するとよいでしょう。取り出して拭くだけのシートタイプ、気になるところに吹き付けるスプレータイプなどさまざまなタイプがあるので、ご自分が使いやすいものを常備しておくことをおすすめします。『感染症を予防する除菌方法|殺菌・滅菌・抗菌との違い』でも詳しく解説しています。

空気の入れ替え

空気中にも菌やウイルスは漂っています。自宅やオフィスでは、時々窓を開ける・換気扇を回す・空気清浄機を使うなどして換気を行うことで空気中の菌やウイルスを除去することができます。空気中の除菌については『空間除菌の効果・仕組み』をご覧ください。

まとめ

妊娠中でもインフルエンザの予防接種は受けられますし、赤ちゃんにも影響することはないので、産婦人科医と相談のうえ流行のピークを迎える前に接種しておくとよいでしょう。ただし、予防接種は感染リスクや、感染しても重症化するリスクを下げるためのものです。また、妊娠中は受けられない予防接種もありますので、感染予防には手洗い・うがい、マスクの着用、除菌・消毒などの予防法を日ごろから心がけることが大切です。

参考文献

  1. [1]三宅研究室(自己免疫・神経免疫研究室). "性ホルモンと免疫" 国立精神・神経医療研究センター 神経研究所 免疫研究部. https://www.ncnp.go.jp/nin/guide/r_men/column2.html(参照2018-03-26)
  2. [2]国立成育医療研究センター. "妊娠と薬情報センター:インフルエンザ情報(医療関係者向け)" 国立成育医療研究センター. https://www.ncchd.go.jp/kusuri/news_med/h1n1.html(参照2018-03-26)
  3. [3]山口 晃史ほか. 妊娠中のインフルエンザワクチン接種の安全性, 感染症学雑誌 2010; 84(4): 449-453

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