一般的な感染予防
2018.04.27

抵抗力を高めることも感染症予防に◎抵抗力を高める方法

からだの抵抗力はウイルスや細菌など外敵の侵入を防ぐ大事な機能で、これを免疫といいます。抵抗力が下がってしまうとからだにどのような変化が起きるのか、また、抵抗力を高めるための方法をドクター監修の記事で解説します。

監修医師

監修 内科医 公衆衛生医師  成田亜希子 先生

ベッドで眠っている女性

最近からだがだるい、体調を崩しやすくなっていると感じる人は、からだの抵抗力が下がっているのかもしれません。抵抗力が下がると、からだにとって良くないことはなんとなくイメージが付くと思いますが、具体的にはどういうことなのでしょうか。ここでは、からだの抵抗力が低下することでどんなことが起きるのか、また、抵抗力を高めるためにはどんな方法があるのかを解説します。

抵抗力が低下するとどうなる?

私たちのからだには細菌やウイルスなどの病原体が体内に侵入した時に、それらを排除して感染を防ぐ抵抗力が備わっています。この抵抗力が低下すると、体の中ではどのようなことが起きるのでしょうか。詳しく見てみましょう。

ウイルスや細菌などに感染しやすくなる

ウイルスや細菌は私たちの身近に数多く存在しています。冬から春にかけて流行するインフルエンザやノロウイルスは、感染した人のせきやくしゃみ、便などの中に含まれています。こうして感染者から排出された病原体を他の人が触って体内に取り込んでしまうのです。体内に病原体が取り込まれると、私たちの体の中では抵抗力が活発に働きます。そして、病原体が悪さをする前に攻撃して排除しようとするのです。このように抵抗力が働く仕組みを「免疫」と呼びます。

自然の中には無数の病原体が存在し、私たちは毎日多くの病原体を体内に取り込んでいます。しかし、免疫が備わっているため、多くは適切に排除され問題となることはありません。しかし、免疫の仕組みが弱くなると、病原体を攻撃して排除しようとする力が弱くなり、病原体に感染しやすくなるのです。

治るまでに時間がかかる

病原体が排除されずに、体の細胞に根を下ろして悪さを始めた状態が「感染」です。感染が成立すると、病原体は正常な細胞の中でどんどん増殖し、発熱やのどの痛み、下痢などの症状を引き起こします。私たちの免疫機能は感染が成立して症状が現れてからも働き続けます。今度は、細胞の中で悪さをしている病原体を攻撃して排除しようとするのです。しかし、免疫機能が低下した状態では、悪さをしている病原体を攻撃する力が弱まり、病原体を完全に排除するまでに長い時間がかかります。

免疫機能は非常にデリケートな仕組みで、疲労による体力の低下やストレスなどで簡単に乱れます。また、抵抗力の低下によって病気になると、免疫機能が疲弊してしまい、更なる抵抗力の低下を招きます。その結果、別の病気にもかかりやすくなるという負のスパイラルが生じることもありますので、適切な対策が必要です。

からだの抵抗力を高めるには

からだの抵抗力を高めるための特別な治療はありません。しかし、抵抗力を高めるための対策には様々なものがあり、どれも実行可能なものです。感染症を防ぐためには、具体的にはどのような対策があるのか見ていきましょう。

睡眠や休息をとる

慢性的な睡眠不足や疲れ気味の人は、免疫機能が低下することが報告されています[1]。免疫機能に必要な抗体の産生は、交感神経によって調節されています。交感神経とは、自律神経の一つで、活動している時やストレスを感じている時に働く神経です。睡眠不足や疲れが溜まっている人は、常に交感神経が緊張した状態となっています。そのため、抗体が十分に産生されず、免疫機能が正常に働かなくなるのです。また、免疫力を低下させるステロイドホルモンが分泌されやすくなることも原因の一つです。

さらに、抗体は成長ホルモンの働きによって産生が促されます。成長ホルモンは夜間10時から2時の間に、深い眠りに就くことで分泌が増加するため、良質な睡眠がない状態では十分な分泌が行われません。成長ホルモンの不足も慢性的な睡眠不足の人が免疫機能の低下に陥る原因なのです[2]。

免疫機能を向上させるためには、十分な睡眠と休息が必要です。特に睡眠は単に長い時間を確保するだけでは意味がありません。深い良質な睡眠が得られるように、心身ともにリラックスした状態を維持しましょう。また、週に一度は、大きな予定を入れず、のんびりできる日を作るとよいでしょう。

栄養バランスの取れた食事

私たちはからだに必要な栄養素を食事で摂ります。そのため、食事の内容は体調の変化にもつながります。当然ながら、偏った食事を続けていると体に不調をきたします。免疫機能の維持には様々な栄養素が必要であり、栄養バランスの取れた食事は免疫機能の向上につながります。摂取カロリーに注意して、主食、副菜、主菜、牛乳・乳製品、果物を満遍なくバランスよく食べることが大切です。望ましい食生活については、厚生労働省が推奨している「食事バランスガイド」を参考にしてみましょう。ここでは、抵抗力を高めるために摂るべき栄養素をご紹介します。

ビタミンA(βカロテン)
ビタミンAには抗酸化作用があり、粘膜を正常に保つ働きがあります。のどや鼻の粘膜は、細菌やウイルスが最初に感染を起こす場所です。ビタミンAの作用でのどや鼻の粘膜が正常になれば、細菌やウイルスをしっかりブロックしてくれるでしょう。また、ビタミンAの代謝物であるレチノイン酸は免疫細胞の働きを活発にする作用も持つことも知られています。
ビタミンAはニンジンやほうれん草などの緑黄色野菜に多く含まれています。脂溶性ビタミンなので、炒め物にて食べると、からだへの吸収が高まります。
ビタミンC
ビタミンCはウイルスを攻撃するインターフロンを生成するのに必要な栄養素です。コラーゲンの生成にも必要な栄養素で、丈夫な体を作る素となります。
レモンやみかん、キウイなどの果物やブロッコリー、キャベツなどの野菜に多く含まれています。しかし、大量に摂っても体に蓄えることはできないので、毎食ごとに十分な量を取りたい栄養素です。
ビタミンE
ビタミンEにも抗酸化作用があり、特に血管の細胞を保護する働きがあります。血管が正常に保たれることで、全身の血行がよくなり、抵抗力が高くなる効果が期待できます。
アーモンドやモロヘイヤ、アボカドなどに多く含まれます。一般的に高カロリーの食材に多く含まれますので、カロリーオーバーには注意しましょう。
ビタミンD
ビタミンDは細胞の核の中に入り込んで免疫機能を調整する作用を持ちます。特に、インフルエンザの予防にはビタミンDが有効であるとの報告もあります。
サケやイワシ、ウナギなどの魚類に多く含まれています。カルシウムと一緒に摂ると吸収力が上がるので食べ合わせに注意してみましょう。
亜鉛
亜鉛は様々な免疫細胞を活性化する働きがあります[3]。
牡蠣やレバー、納豆などに多く含まれています。亜鉛不足になると味覚障害生じることがあり、食生活の乱れにもつながりますので積極的に取り入れたいミネラルの一つです。
マグネシウム
マグネシウムは免疫機能に必要な多くの酵素を補助する働きがあります。また、交感神経の興奮を鎮め、抗体の産生量をアップする効果も期待できる栄養素です。
大豆製品やほうれん草に多く含まれています。
他にも抵抗力を高める効果があるといわれている栄養素はたくさんあります。不足しがちな栄養素を補うためのサプリメントも多く市販されていますので、それらを活用してみるのもよいでしょう。ただし、サプリメントだけで栄養素を摂ろうとするのはやめましょう。

ヨーグルトなどで腸内環境を整える

私たちの体にある免疫細胞の多くは腸の中にいると考えられています。ですから、抵抗力を高めるには健康的な腸内環境が必要です。腸内には善玉菌や悪玉菌と呼ばれる腸内細菌が100兆個以上生息しています。文字通り、善玉菌は便通を改善し、免疫細胞を活性化させたり増やしたりする善い効果を持ちます。一方、悪玉菌は善玉菌の作用を邪魔して免疫細胞を弱らせるだけでなく、便秘や下痢を引き起こします。抵抗力を高めるには、善玉菌を増やして悪玉菌を減らすことが必要です。

善玉菌と悪玉菌のバランスは人によって異なります。一度出来上がってしまったバランスを変えるのは難しいですが、乳酸菌を多く摂取することで腸内の善玉菌を増やすことが可能です。乳酸菌はヨーグルトなどの乳製品に多く含まれます。乳製品が苦手な人は、乳酸菌が含まれたタブレットや飲み物を取り入れるのもおすすめです。また、乳酸菌はオリゴ糖と一緒に摂取することで、腸内での増殖を高める効果がありますので、オリゴ糖も積極的に摂ることが大切です。

からだを冷やさない

私たちのからだが正常に働くには一定以上の体温が必要です。免疫機能が働くには、様々な酵素が必要です。酵素は体温が下がると働きが弱くなります。また、手足の冷えは全身の血流を悪くして、新鮮な免疫細胞が隅々まで行きわたらなくなるのです。からだを冷やさないためには、薄着をしない、冷房を強くしすぎないなどの対策が有効です。また、体を芯から温めるショウガなどの食品を摂ることもおススメです。

ウイルスや細菌を体内に入れない

感染症を防ぐうえで最も大切なのは、ウイルスや細菌を体内に取り込まないことです。ウイルスや細菌は私たちの身近に多く潜んでいます。ですが、それらをしっかりブロックすれば感染症を防ぐことができます。具体的には以下のような対策が必要です。

  • マスクの着用
  • 手洗い・うがいの習慣化
  • 空気の入れ替え
  • 室内の湿度と温度の調整

予防接種

ワクチンがある感染症は予防接種を受けることも大切です。特に毎年流行するインフルエンザには、有効なワクチンがあります。感染を大幅に防ぎ、万が一感染したとしても多くは重症化を防ぐことが可能です。また、インフルエンザのワクチンは、その年の流行によってワクチンの型が異なりますので、毎年受けることをおすすめします。

いかがでしたか?感染症の予防には、病原体を体内に入れないことを基本対策として、抵抗力を高める習慣を身に着けることも非常に大切です。また、予防接種もインフルエンザをはじめとした重篤な感染症を予防することができます。日頃から、適切な対策を続け、感染症から大切なからだを守りましょう。

参考文献

  1. [1]岡村尚昌ほか. 睡眠時間は主観的健康観及び精神神経免疫学的反応と関連する, 行動医学研究 2009; 15(1): 33-40
  2. [2]木村公喜. "自律神経活動と健康づくり, 日本経大論集 2012; 42(1): 17-22
  3. [3]西田圭吾. ここまで分かった亜鉛の免疫システムにおける役割, 日本衛生学雑誌 2013; 68(3): 145–152

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